種麹のはじまり
古くから麹は存在しており、その当時は野生の菌が自然種付されたことにより、麹が造られたとも言われております。その自然種付を重ねるうちに蒸米に良く増殖するカビが選択されたと推測されています。そのカビが麹菌ということになります。
10世紀あたりより自然種付法から出来の良い麹からの友種(友麹)法に移り変わったとされております。この友種は、麹菌を培養した種であり、種麹と同等の扱いと言えます。
初期の友種は不安定であり、室町時代に木灰を蒸米に添加することにより、麹菌胞子を安定させることが可能となり、現在の種麹の基礎が築かれました。
参考
【日本醸造工業発行 炉辺閑話 第01号(昭和51年2月15日発行)より】
坂口謹一郎博士によると(醸協・58巻5号・1963)種麹の起源が下記のように考察されております。
『平安朝初期(9世紀)に刊行された「令集解」という書物は、奈良朝あるいはそれ以前の律令や制度について書いています。その中に「未醤」の仕込割合として、原料合計1斗に対し8合という少量の「麹子米」を使うとしている。この麹子米は種麹ではないだろうか。中国では子という文字を草木の種子の意味に使用するので、麹子を種麹と考えても無理でないような気がする。』と述べられております。
「醤」の醸造法は聖武天皇時代(8世紀)に「酒造法」は5世紀に伝来されたことになっており、「酒造法」がわが国に伝来したころに書かれた支那の酒造関係文書には、種麹に関し何の記述がなかったとのことです。当時の支那に種麹がなかったとすれば、酒造法が伝来してから300年の間にわが国か百済(くだら)かで、種麹を使う新技法がはじまったとするのが至当と考えられます。